よくある質問

「限定正社員」制度の導入~多様な人材が活躍するために~各種「限定正社員」の意義を明確に規定しておく

質問

各地に小売業の店舗(主に食料品中心)を展開しております。以前から販売部門ではフレックス社員制度、地域密着型コミュニテイ社員制度があり、その役割も働き方も様々で現在までは、比較的に必要な人材を確保できておりました。

教育、登用の機会も公平に、成果に応じた処遇改善も行ってきたつもりです。これからも時間、場所、評価もより柔軟な組織風土を目指しております。

近年、労働力減少時代の雇用システムとして多様な人材の活用・能力発揮が叫ばれております。その考えの中心に位置する「限定正社員制度」導入の目的と問題点について改めて確認しておきたいと思います。

次に、既存の就業規則の変更、新たな制度導入による就業規則の作成等で注意すべき事項などについてご指摘いただけたらと思います。

 
答え

既に優れた人事諸制度が機能されているようですが、まず、「限定正社員制度」の基本的な考え方の経緯についての確認です。

政府は、平成25年6月14日、『日本再興戦略」において職務等に着目した多様な正社員モデルの普及・促進を図るため、政府は有識者懇談会を立ち上げ、労働条件の明示等『多様な正社員』の普及・拡大のための検討をしてきました。

【日本再興戦略】改訂 2014ー未来への挑戦ー(平成26年6月24日)「多様な働き方の実現」に向けた検討を開始しました。その中で
① 働き過ぎ防止のために、「朝方」の働き方の普及、
② 一定の年収要件を満たし、職務範囲が明確で高度な職業能力を有する者を対象とした「新たな労働時間制度」の創設
③ 裁量労働制の新たな枠組みの構築
④ フレックスタイム制の見直し
職務等を限定した「多様な正社員」の普及・拡大
⑥ 最低賃金の引上げの環境整備等の実現等を目指しています。

その他にも、紛争解決システムの構築、外部労働市場の活性化、(ジョブカードからキャリアパスカードへ、能力評価制度の見直し、キャリアコンサルの体制整備、官民共同による外部労働市場のマッチング機能の強化、職業訓練のベストミックスの推進など)、更に、女性の活躍推進、、若者・高齢者等の活躍推進、外国人人材の活用等です。

【多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会報告書】(平成26年7月)には、
Ⅰ 労働市場における現状と「多様な正社員」の普及の必要性
Ⅱ 多様な正社員の円滑な活用のために使用者が留意すべき事項と促進するための方策
についての報告があります。

そのなかで多様な正社員の効果的な活用が期待できるケースとして
(1) 勤務地限定正社員 → 主要なタイプ
(2)職務限定正社員 → 曖昧さがある(資格職務の多い業種(医療、福祉、教育、製造職・・・)
(3)勤務時間限定正社員の3つに区分しております。(※これらの複合型もあり)
2 労働者に対する限定の内容の明示、
3 事業所閉鎖や職務の廃止等の場合の対応
4 転換制度
5 処遇
6 いわゆる正社員の働き方の見直し
7 人材育成・職業能力評価
8 制度設計・導入・運用にあたっての労使コミュニケーション等を留意すべき事項として挙げております。

「多様な正社員」普及・拡大にための報告書のポイント(平成26年7月30日)効果的な活用が期待できるケースとして

● 勤務地限定正社員の活用・・・育児・介護のため転勤困難者、有期契約労働者から無期転換の受け皿として、多店舗経営サ-ビス業従事者など地域ニーズにあったサービスの提供、顧客の確保
● 職務限定正社員の活用・・・特定職能について高度専門的な職務従事者など(金融、ITなど)、資格の必要な職務
● 勤務時間限定正社員・・・育児・介護のため長時間就労の困難者、自己啓発・キャリアアップの時間確保者など

※報告書の内容については [多様な正社員導入・運用のための提言]

制度の導入・運用については上記リンクの有識者懇談会報告書にある提言をお読みいただき、導入事例等を参考にして取組んでください。

留意すべき事項としては
① 職務の廃止や事業所の閉鎖・廃止の際には解雇4要件の適用
② 能力不足社員への対応
③ 転換制度の設計・対応
④ 正社員との均衡ある処遇
⑤ 多様性への対応(残業・配転・期間)
⑥ 人材育成、能力評価面からの職業訓練機会の付与、支援
⑦ 制度導入に当たっての労使コミュニケーションを図ることなどが提言されています。

就業規則及び有期雇用契約書について

上記『日本再興戦略』及び『規制改革実施計画』において、《・・・就業規則の規定例を幅広く収集し、情報発信を行う》こと等が決定されました。
更に、懇談会報告書では、留意事項として労働契約法を根拠としながら就業規則を定め、制度として明確にするよう強調しております。

支社、営業所が全国各地に所在していたり、多様・多種な業務や職種がある企業、育児・介護の必要な社員など、多様な正社員制度を導入し、正常に機能させるためには、これを機会に現存の就業規則を見直し、整備して未然のトラブル防止に努めたいものです。

● 就業規則や労働契約における限定の内容の明示の必要性

勤務地や職務について限定がある場合は、その旨と限定の内容について当面のものか、将来的にも限定されたものか明示しておくことが重要です。労使双方が認識しておくこと。これらをめぐる紛争を未然に防止し、将来の予測可能性を高めておく必要があります。

裁判例における限定の有無の判断においても、労働契約書に限定の有無が明示されていても認められない場合が多いようです。
労働契約書に、職務や勤務地は明示しているものの、それが当面のものか、将来的にも限定されたものか明示していない場合や、限定の有無や内容が異なる労働者について同一の就業規則の規定が適用される場合など、労働契約の成立時における労働契約書や就業規則の職務や勤務地の記載などのみで限定の有無を判断されることは難しいようです。

● 限定がある場合はその内容を就業規則で定めるとともに、労働契約の締結や変更(転換)の際に、その労働者に書面で明示すること。

● 労働契約の締結や変更の際に、限定がある場合は限定の内容について労働者に書面で確認することを明記し、明示すること。

● 「有期雇用契約書」については、雇用区分を明確化し、「就業の場所」、「従事すべき業務の種類」及び「勤務時間」等、勤務地、職務、勤務時間の限定に区分し、又、それらの組み合わせた内容を具体的に明示する。

●「限定正社員就業規則」の作成・・・限定正社員の定義を明確に規定・・・職種限定正社員については工場や部門閉鎖、特定取引の契約終了等が解雇理由であること。勤務地限定正社員については当該勤務地又は一定エリアの勤務地の事業所の閉鎖・消滅等が解雇理由であることなどを明確にしておく。

>>>よくある質問TOPに戻る

▲ ページトップ

社会保険労務士個人情報保護事務所 経済産業大臣認定 個人情報保護機関認証
事務所概要 個人情報保護方針